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ホーム > WOOFWOOFマガジン > とぶ(tobu) > From Europe フランス、ピレネー山脈オオカミからヒツジを守るグレート・ピレニーズ







フランスとスペインの国境に南北に縦断するピレネー山脈。斜面に広がる牧草地と美しい山村が散在するフランス側のこの地域に、一時はほとんど消えてしまったグレート・ピレニーズが今、作業犬として戻りつつあります。地元では「パトゥ(Le Patou」(「羊飼い」の意)と呼ばれていますが、それもそのはず、グレート・ピレニーズは本来は牧畜番犬。羊をクマやオオカミ、泥棒から守るガーディアンとして働いてきました。
 19世紀の終わりごろ、乱護によってピレネー山脈からオオカミとクマは姿をほとんど消してしまいました。当然の結果ですが、これら動物の襲撃から羊を守る仕事をしていたグレート・ピレニーズは、その存在意義をすっかり奪われてしまいました。ところが1990年代に入り、EUの自然保護政策により、ピレネー山脈に再びオオカミやクマが人工的に導入されるようになりました。ピレネー山脈の牧畜主達はこの政策に最初強い反対姿勢をみせましたが、同時に昔の伝統をも思い出しました。
「そうだ、我々にはグレート・ピレニーズがいたではないか!」
グレート・ピレニーズがいれば、野生動物を保護しながら、同時に牧畜業も成り立たせることができます。



「よき牧畜番犬」には定義があります。
ドレースという村で500頭の羊と3頭のグレート・ピレニーズを飼うロジャー・ピネーダさんによると、それは羊と強い絆を作る、そして羊を保護しようとする犬。人よりも羊のそばにいたがる犬。山を行くハイカーなど、人についていって羊のそばを犬が離れてしまったら、羊はいつ何時捕食動物に襲われてしまうかもしれません。ですから牧畜番犬たるもの、人間に懐き過ぎてもいけないのです。
「生後八週間目になったら、子犬を羊と寝起きを共にさせるんだ。そうすることで、犬は自分のことを羊だと思い込むようになる。この気持ちこそが、牧畜番犬の「羊を守りたい!」という強い意志の源になるんだ」
 羊の群れは時に、グレート・ピレニーズを先頭にして山を移動することもあります。羊たちは犬に絶対的な信用をよせています。そして犬が吠えると、危険が迫っている、ということを察知して羊はなんと犬のところに皆集まってくるのだそうです。
 ロジャーさんは「ピレネーの山岳の共生を考える会」という団体の会長も務めています。この団体は牧畜番犬の登録管理を行い、牧畜を営む牧畜犬希望者に子犬をあっせん、教育する事業も行っています。クマとオオカミの特別保護区となっている場所では、牧畜主に牧畜犬を維持するための補助金も与えています。この10年間の間で、団体は約200頭のピレニーズ犬を山岳の牧場に配置してきました。
「時に犬が可哀想っていう人もいるんだよ。山で羊の元にほったらかしにされてって。僕は同意できないね」
だって…、とロジャーさんは続けます
「グレート・ピレニーズにとって、羊は彼らの家族なんだよ。そう彼らの全て。降っても照っても羊のいくところ、どこまでもついていって守ってあげる。それがピレニーズの喜び。これ以上の幸せを、いったいどう望めるっていうんだい?」


犬は羊といる間、たいてい何もしない。寝ているか、座っているか

5ヶ月のパピー。すでに子犬の時点で、羊の群れの中に入り、番をすることを学ぶ

犬は侵入者を襲うことはまずない。羊との間にはいってきて、自分がここを守っているんだ、ということを主張するだけでたいてい事は済む